税務ブログ

から揚げ店閉店に思うこと。~何故つぶれたのか?~

約1か月前に近所のから揚げ店がつぶれてしまいました。から揚げのほかにも天ぷらも販売していて、妻と私もよく利用していたので、今回の閉店には非常に残念な気持ちになりました。コロナ禍前からテイクアウトの専門店でまぁまぁ繁盛していたようにも思っていたので、閉店するとは意外な感じもしましたが…。

から揚げ店は何故つぶれたのか?

コロナ禍の影響もあったと思いますが、多分に従業員の横領による影響もあったのではないかと個人的には思っていたりもします。ある中年の女性店員からは、「レシート必要ですか?」と言われ、恰幅の良い若い男性からは「レシート出ませんけどいいですか?」と言われたことがあります。私の経験上、少なくとも2人からレシートの発行の有無等を確認された記憶があります。

レシートを発行しないことの意味

レシートを発行しないで客からお金を収受すると、レジの帳簿上は売上が計上されないにも関わらず、レジのお金が増えることを意味しますので、会計上及び税務上は「売上の計上漏れ」ということになります。この売上の計上漏れは、会社の管理上よくありませんので、経営者は従業員に対してレシートの発行を徹底するように指導するのが一般的かと思います。それにも関わらず従業員がレシートを発行しないというのは、客から受け取ったお金を自分の懐に入れるという可能性が極めて高いと考えられます(そういう意味では、レシートを発行しませんという店員は、私はこれから横領しますと宣言しているのに等しいかもしれません。)。自分の懐に入れる限りにおいては、レジの帳簿上の現金の金額と実際のレジに収納されている現金の金額に差異は生じませんので(単純なお釣りの受け渡しミスを除く)、帳簿のみでは横領を見つけることはなかなか難しいのではないかと思います。

横領を見つけることは難しいのか?

従業員1人でお店を切り盛りしている場合には、従業員同士のチェック機能が働きませんので(共謀している可能性もありますが…)、横領を見つけるのは難しいように思いますが、財務諸表上で横領の可能性を認めることも可能かと思います。今回のような飲食店での横領が継続的に発生している場合には、財務諸表上ある数値が悪化していきます。

それは、粗利益率(売上総利益率)です。計算式を確認してみましょう。

・売上総利益

売上高-売上原価

・売上総利益率

売上総利益÷売上高×100

実際に計算してみた

<例>年間の売上高500万円、年間の仕入高300万円の場合

・通常の場合

売上総利益:200万円(500万円 – 300万円)

売上総利益率:40%(200万円÷500万円×100)

・横領している場合(50万円が従業員の懐に入ったと仮定=帳簿上は50万円の売上が計上されない)

売上総利益:150万円(450万円 – 300万円)

売上総利益率:33.3%(150万円÷450万円×100)

上記で計算した通り、横領の場合には売上総利益率が悪化する結果となりました。売上が発生しないのに商品がどんどんなくなるわけですから当然といえば当然ですね。

過去の売上総利益率の推移と比較して、明らかな異常値が発生していることを確認できた場合には、従業員による横領の可能性を疑った方が良いかもしれません。

従業員の横領を防ぐには?

一般的には以下のような防止策が考えられると思いますが、私はその道のプロではありませんので、ご参考程度に書いてみました。性悪説の立場にたって、基本的には従業員に横領をさせる機会を減らす環境づくりが大事なのではないかと思います。

・現金の使用を減らす(電子マネーの利用など)

・レジに監視カメラを設置

・従業員を1人にさせない

税務上の処理は?

なお、横領が行われた場合の税務上の処理は結構厄介なところがあります。詳細は下記リンク先のEYの記事が参考になるかと思いますので、そちらをご参照ください。今回のから揚げ店での税務上の処理は以下のようになると思います。

(税務上の仕訳)

・横領発覚時

未収金 ××× 損害賠償請求権 ×××

従業員に対して損害賠償請求権が発生します。

・従業員に返済能力がない場合

貸倒損失 ××× 未収金 ×××

従業員から回収できない場合には、貸倒損失を計上することとなります。

(ご参考:EY Japan)

https://www.ey.com/ja_jp/library/info-sensor/2020/info-sensor-2020-05-04