A. 経過措置の適用する場合の仕入税額とみなす金額の具体的な計算方法については、国税庁のQA(QA127)に具体的な計算方法が記載されております。そちらを参照して計算方法ごとに区分して整理してみました。
(国税庁QA127)
(帳簿積上計算の場合(注))
本経過措置の適用を受ける場合においても「積上計算」により計算する必要があります。本経過措置の適用を受ける課税仕入れの都度、その課税仕入れに係る支払対価の額に110分の7.8(軽減税率の対象となる場合は108分の6.24)を乗じて算出した金額に100分の80を乗じて算出することとなり、その金額に1円未満の端数が生じたときは、その端数を切捨て又は四捨五入をすることとなります。具体的な数字を用いて計算してみましょう。
<例:111,000円の課税仕入れの場合>
111,000 * 7.8/110 * 80% =6,296.727 ➡6,297円(四捨五入の場合)
上記の取引が10回行われた場合の仕入税額の合計は62,970円となります。
(割戻し計算の場合)
本経過措置の適用を受ける場合においても「割戻し計算」により計算する必要があります。課税期間中に行った本経過措置の適用を受ける課税仕入れに係る支払対価の額の合計金額に110分の7.8(軽減税率の対象となる場合は108分の6.24)を乗じて算出した金額に100分の80を乗じて算出することとなります。帳簿積上げ計算の場合は「課税仕入れの都度」計算することに対して、割戻し計算の場合は「課税期間中に行った本経過措置の適用を受ける課税仕入れに係る支払対価の額の合計金額」で計算する違いがある点に留意しましょう。具体的な数字を用いて計算しましょう。
<1,110,000の課税仕入れの場合>
1,110,000 * 7.8/110 * 80% =62,967.272➡62,967(この場合の消費税の端数は切捨て)
帳簿積上げ計算の例と割戻し計算の例では、支払対価の総額は同じ1,110,000円ですが、仕入税額の計算は端数処理の関係から3円ズレていることに留意しましょう。
(注)免税事業者は適格請求書を発行していない前提であるため、経過措置の適用を受ける場合の税額計算にについては、インボイス積上計算は馴染まないことになります。したがって、インボイス積上計算を選択している際に、免税事業者等からの仕入を受けた場合には、インボイス積上計算と帳簿積上計算が併用されることが想定されます。もっとも、仕入サイドのインボイス積上げ計算は管理上の手間が生じると想定されるため、実務上はあまり選択されることがないように思われます。