A. インボイス発行事業者が国内で行った課税資産の譲渡とにつき、返品や値引き、割戻しなどの売上げに係る対価の返還等を行った場合には返還インボイスの交付義務がありますが、その金額が税込み1万円未満である場合には、返還インボイスの交付義務が免除されることとなります(新消法57の4③、新消令70の9③二)。
例えば、売り手が負担する振込手数料相当額を売上値引きとして処理している場合には、通常、当該振込手数料相当額は1万円未満となりますので、当該売上値引きに係る返還インボイスの交付義務が免除されます。
振込手数料の取扱いについては、下記に整理いたしました。
振込手数料を買主が負担する場合
(前提)
●商品代金:110,000円(税込み)
●振込手数料:550円(税込み)
(買主の処理)
買掛金 110,000円 現金預金 110,000円
支払手数料 (*1) 550円 現金預金 550円
(*1)この支払手数料に係る消費税について、仕入れ税額控除を受けるためには以下の区分により取扱いが異なるため留意が必要です。
①ATMを利用する場合
ATMを利用する場合には、適格請求書の交付が困難な取引として交付義務が免除されることから(国税庁インボイスQA41)、買主側においては適格請求書の保存は不要となります。ただし、帳簿への記載は必要です。
②インターネットバンキングや窓口で振込手数料を支払う場合
インターネットバンキングや窓口で振込手数料を支払う場合には、銀行側に適格請求書の交付義務が生じますので、買主側においては適格請求書の保存が必要となります。
(売主の処理)
現金預金 110,000円 売掛金 110,000円
振込手数料を売主が負担する場合
(前提)
●商品代金:110,000円(税込み)
●振込手数料:550円(税込み)
(買主の処理)
買掛金 110,000円 現金預金 110,000円
支払手数料 550円 仕入値引 550円(※2)
(※2)疑似取引なので、通常は仕訳は省略されるかと思います。
(売主の処理)
現金預金 109,450円 売掛金 110,000円
支払手数料(売上値引)550円(※3)
(※3)当該支払手数料について、売上値引きとして処理している場合には、通常、当該振込手数料相当額は1万円未満となりますので、当該売上値引きに係る返還インボイスの交付義務が免除されることとなります。なお、売手が負担する振込手数料相当額を、課税仕入れとして処理している場合には金融機関や取引先から受領するインボイスが必要となります。
詳細につきましては、下記国税庁のホームページをご確認ください。
(国税庁ホームページ)
少額な返還インボイスの交付義務免除の概要|国税庁 (nta.go.jp)