法人税

Q. 未確定債務とは?~法人税と消費税の処理を確認しましょう~

A. 未確定債務とは、その名の通り債務が確定していないものを言います。債務が将来発生することが見込まれているが、金額が具体的に定まっていないようなものが挙げられます。未確定債務は法人税法上は損金の額に算入することができず、また、消費税法上も仕入税額控除を取ることはできません。どのような処理になるか具体的に見てみましょう。

目次

前提

・未確定債務として110,000円(うち、仮払消費税10,000円)を計上

・資本金は便宜的に110,000円とする

・上記以外の取引はない

・会計処理は以下のように処理されている

外注費 100,000円 / 未払費用110,000円

仮払消費税 10,000円

会計上のBSと税務上のBSの比較

それぞれのBSを比較しましょう。

現金
110,000
仮払消費税
10,000
未払費用
110,000
(会計上のBS)資本金
110,000
繰越利益
△100,000
現金
110,000
仮払消費税
0
未払費用
0
(税務上のBS)資本金
110,000
利益積立金額
0

会計上は未確定債務を認識していますが、法人税法上は未確定債務はなかったものとして取り扱います。会計上は繰越利益剰余金が△100,000円である一方で、税務上の利益積立金額は0円である点を確認しましょう(余力のある方は法人税法施行令9条1項で利益積立金額の項目を確認しましょう。条文上からも利益積立金額が0円であることがわかるはずです)。

別表4を確認しましょう

(別表4:簡易表示)

当期純利益△100,000
(加算)
未払費用否認 110,000
(減算)
仮払消費税否認  10,000
所得    0

法人税法上の所得が0円になったね!

続いて別表5(1)を確認しましょう!

(別表5(1):簡易表示)

法人税申告書の別表5(1)の合計(利益積立金額)が0円であることを確認することができます。

項目期首減少増加期末
未払費用(未確定債務) 110,000110,000
仮払消費税△10,000△10,000
繰越損益金△100,000△100,000
合計(利益積立金額) 0

未確定債務を計上した事業年度の法人税と消費税の取扱い

<法人税>

所得が0円となります。

<消費税>

未確定債務に係る消費税は仕入税額控除を取れないため翌事業年度に還付は受けとることはできません。

翌事業年度の処理

翌事業年度に債務が確定し外注費を支払った場合の処理を検討しましょう。以下の会計処理が行われます。

未払費用 110,000 / 現金預金 110,000円

税務上は債務の確定した事業年度に損金に算入することができ、また、消費税法上も仕入税額控除を取ることができます。会計上のBSと税務上のBSを比較したうえで、別表4と別表5(1)の動きも見てみましょう。

現金
0
仮払消費税
10,000
未払費用
0
(会計上のBS)資本金
110,000
繰越利益
△100,000
現金
0
仮払消費税
10,000
未払費用
0
(税務上のBS)
資本金
110,000
利益積立金額
△100,000

会計上のBSと税務上のBSに差異がなくなったね!

(別表4:簡易表示)

当期純利益

0
(加算)
前期仮払消費税認容10,000
(減算)
前期未払費用認容110,000
所得△100,000

法人税法上の所得が△100,000円になったね!

(別表5(1):簡易表示)

法人税申告書の別表5(1)の合計(利益積立金額)が△100,000円であることを確認することができます。

項目期首減少増加期末
未払費用(未確定債務) 110,000 110,000 0
仮払消費税△10,000△10,0000
繰越損益金△100,000△100,000
合計(利益積立金額)0100,000 △100,000

未確定債務を計上した事業年度の翌事業年度の法人税と消費税の取扱い

<法人税>

所得が△100,000円となります。

<消費税>

確定債務に係る消費税10,000円について仕入税額控除を取ることができ、翌事業年度に還付を受け取ることができることになります。

翌々事業年度の処理

消費税10,000円の還付金を受け取ることとなりますので、会計処理は以下のようになります。

現金預金10,000円 / 仮払消費税(未収還付消費税)10,000円

最後に会計上のBSと税務上のBSを確認しましょう。

現金
10,000
仮払消費税
0
未払費用
0
(会計上のBS)資本金
110,000
繰越利益
△100,000
現金
10,000
仮払消費税
0
未払費用
0
(税務上のBS)資本金
110,000
利益積立金額
△100,000

会計上のBSと税務上のBSに差異はありませんね!

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